2019/2/11
「雨にも負けず」の強烈な印象が、賢治そのものとして刷り込まれていたけれど、「そういう人に私はなりたい」で締めくくられたのを、すっかり忘れていた。賢治がいかにして、そういう人になりたいと思うようになったのか、それを知ることができた。
でも、この父子関係が現代にも通じるものがあって、これはやはり血というものなのかとも思ったりした。自分の果たせなかった夢を子供に託してみたり、迷走中の子供にあきれながらも、仕送りをしてやったり。それを当然のように思っている息子。
そして、創作というものが、いかに業の深いものであるか。
それでも、息子の作品が認められると、嬉しさがこみあげてくる父親。いろんなものを受けて入れる親の愛の深さ。賢治は一人で賢治になったのではない。家族の理解と支えと犠牲の上で、才能を開花させた。もっとも、認められたのは、死後だったのだけど。エゴイストだなぁと思わなくはないけれど、今も読み継がれている彼の作品は魅力があふれている。
読み手は、この小説の登場人物の誰かに共感できる部分が必ず見つけることができると思う。家族の在り方も考えさせられた。面白かったです。