ヴィカス・スワラップ翻訳:子安亜弥 ぼくと1ルピーの神様 ランダムハウス講談社
- 作者: ヴィカス・スワラップ,子安亜弥
- 出版社/メーカー: ランダムハウス講談社
- 発売日: 2006/09/14
- メディア: 単行本
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小説のタイトルに出てくる1ルピーは、小説の中でも重要な小道具に使われている。最後で種明かしをされるが、この主人公ラムが愛おしく感じる。クイズ番組で見事10億ルピーを獲得するが、制作会社は想定外の出来事に驚き、スラム育ちの彼を詐欺容疑で警察に逮捕される。そこから、彼がいかにして難問を見事に答えることができたのかを、告白していくという展開。最初はいかに彼が幸運でよい人たちにめぐり合えたのかというお気楽な顛末を聞くことになるのかと思いや、彼の今までの生い立ちの中で経験してきた様々のことに目を見張る思いをすることになる。貧困や虐待、小児性愛、売春、強盗、暴力、異教徒間のいさかい、戦争、全て存在するものばかりである。それでもしたたかに、彼は生き延びてきた。生きるために必然的に身につけた事、身についた事、それは学校でも教えてくれない事でもある。出来れば知らなくても済んだほうが良いことかもしれない。それでも、彼は過酷な現実に投げることなく、諦めずに、生き抜いてきた。それが結果となって彼のところに戻ってきた。彼は当然の権利を得たまでのことだと思わせる魅力を持っている。それだけ、インドの現実が私の想像の及ばないほどの厳しさが満ちていた、ということにも繋がっていくかもしれない。
最後の種明かしには、ほっとさせられた。彼が背負っている罪の1つが減ったのだから。クイズ番組に応募した直接的な動機も明かされる。最後はえらい勢いで大団円に向かう。何だかインド映画みたいって、見たことないけど、勝手にそう思ってしまったw。