なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

佐藤優 国家の罠 新潮社

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

国家の罠 外務省のラスプーチンと呼ばれて

常に圧倒され放しだったよ。外務省の仕事、外交官という職業、外交とは何かを知るには、格好の一冊じゃないだろうか。
著者がノンキャリだったのに驚いたけれど、それよりも、彼の教養、知識の豊富さや、それを存分に生かした洞察力や分析力、行動力にも相当のものがあると思う。彼が、仕事を通じて見た政治家の印象は、テレビを見るだけではわからないことばかりで、目からウロコだった。特に小渕総理とか。拘置所の中での生活、検察官とのやり取り、鈴木宗男田中真紀子に対する外務省の思惑、ロシアチームの仕事ぶりだとか、どこを読んでも、エンタメ系要素は充分含んでいて飽きさせないのだ。
一貫して徹底している国益を考えるのが最優先事項ということなんだけど、その国益って正義とはイコールではない思う。結果として、利益としてもたらすための駆け引きの中では、あらゆる問題を含まれていることがこの本の中でも読み取れることが出来る。それを知りたい読者には上手く煙幕を張られたなという印象を持つ。
というか、著者は常に牽制した文章を放っている。だから、読み手も、彼は一体誰に向かってどんなメッセージを送っているのだろうかと考えさせる。そこが上手いなと思う。誰なのかは、わからないんだけど(笑)。この著書の中には、非公開の情報も含まれているのだろうか。
外務省の官僚が「日本人の実質識字率は5%」と言ったというくだりがあるんだけど、彼の能力からしてみれば、それは失礼だ!と言い切れないのが辛いよな。正直、ほんとに深く読み込んだとはいえないもの。彼の書いてあることを全て理解するには、日露外交とか北方領土問題だとか全て理解している前提ではないと、難しいと思う。