なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

NARA:奈良美智との旅の記録

2007年 日本 時間:93分 配給:東北新社
監督:坂部康二 出演:奈良美智/graf AtoZチーム ナレーター:宮崎あおい

シネカノン神戸にて鑑賞

奈良美智の描く女の子の絵。三白眼で上目遣いで箱の中に入っている女の子。緊張感もはらんだ絵が何故だかとても好きというか、ひきつけられた。最近、何だか穏やかで凛としてきたのだ。随分変わってしまったなぁ。こんなタッチも好きだけど、あっちの女の子の方が自分に近いかもしれない。そんな画風の変化がこのドキュメンタリで理由がわかった。奈良さん自身も「良いことか悪いことなのかわからないけど、変わらないよりはいいんじゃない」と話していた。自分に対して求めるものがとても高いんだと思う。それは、自分の作品につけられる値段の高騰ぶりよりも(何十倍って!)自分がこれで終わらせないということを弘前弁でとつとつと語る言葉からも伝わってきた。
映画の中では、バンコクやロンドン、ニューヨーク、ソウル、弘前へと移動している。どこに行っても、ぶれないのだ。何か強いなぁーと思う。ギャラリーを見て、小屋の構想をgrafのスタッフと話してたり、それをスタッフが即座に理解して、打ち合わせが盛り上がっているときの表情とかがすごく良くて、そりゃ画風も変わるわなぁーとか思うもの。
一番印象的だったのは、ソウルのファンミーティングの光景。7歳の女の子に、奈良美智は子供の頃の自分を見たのかな。製作現場にも彼女の手紙を張ったりしていた。寂しいときには「奈良おじさん」と名前を呼びます。って7歳の女の子は言うのだ。なかなか考えてもいえる台詞じゃないって。それは彼が孤独感が絵を描くことの原動力だったという言葉とシンクロしているみたい。
実はこういうとんがった絵を描く人って、外見からも個性的というかアーティストぽい格好をしている人なのかと思っていたんだけど、そこらへんの町を歩いていても多分気がつかないだろうなと思う人だったのでちょっと驚いたんだけど、内面の思索が非常に深いのではないか、というのが彼のとつとつとした言葉から、決して能弁ではないけれど、言葉足らずではない、でもきちんと自分の思いを相手に伝えようとしているところからみえてくる気がした。

それから、一枚の白い布を切断するところから始める制作風景。こんなところを撮らせていいのか!と思ったけど、こんなに目まぐるしく変わるのかとその過程にもびっくり。これで完成してんじゃないの?と思うのに、次々と塗り重ねられていく。完成した作品は、あぁ成る程、これが完成なのかーと、それが黒目がちの凛とした目の持ち主の女の子だったのだ。

「A to Z」を見に来ているお客さんの表情がきらきらして楽しそうで、本当に羨ましかった。

A to Z

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ちいさな星通信

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