なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

女の子ものがたり

2009年 日本 時間:110分 配給:エイベックス・エンタテイメント/IMJエンタテイメント
監督:森岡利行 出演:深津絵里/大後寿々花/福士誠治/風吹ジュン
シネリーブル神戸にて

原作:

女の子ものがたり

女の子ものがたり

大人になった漫画家、菜都美が少女時代を振り返る展開。ひなびた町へ引っ越して、新しいお父さんとの生活、そう楽でもなさそうな暮らし、転校。なんというか晴れがましい要素が何ひとつない感じ。そこで知り合った友達2人みさちゃんときいちゃん。それぞれがいろんな「事情」を抱えているような様子。お母さんは「友達を選びなさいよ」と言うけれど、何一つ共通点を持たない子と仲良くなるのは難しいことかも。子供は子供なりに敏感に家庭の事情と言うものを嗅ぎとるもんじゃなかったかなぁ。ただ、この小学生たちはそれぞれ可愛すぎて屈託なさ過ぎて、目もきらきらしすぎてまぶしくて、そういう影を見て取れないんだよねぇ。それを求めるには酷なのかもしれない。
この映画で一番印象に残るのは高校時代。奈都美役の大後寿々花が大人と子供の間を行き来する揺れる思いとか戸惑いやらを見事に体現してくれた。みさちゃんやきいちゃんは外に出ることを選ばず、この町で生きることしか頭にはない。「やくざが知り合いにいる」ことが自慢であるらしい男と付き合うことがステイタスのように感じている二人に距離を感じる。それを敏感に感じ取るきいちゃん。自分が子供のときに自分に言い聞かせたときのように「みさちゃんもきいちゃんも幸せ」と唱える場面は何とも切ない。みさちゃんは友達に借金を申し込むくせに、高級ブランドのバッグや時計を「買ってもらった」と自慢するちぐはぐさ。きいちゃんも顔に暴力を受けたのがわかるのに、やたらファンシーに飾り立てた家で友達を迎える。本当はお互いのちぐはぐさをわかりきっている。心に蓋をしてしまって、あえて鈍いふりをしている。それがきいちゃんが奈都美に引導を渡すところで爆発するところが、出て行く側、残るしかない側の両方の気持ちが伝わってきて、その蒼さすら羨ましく思えた。大人になるのは、いろんなものを忘れたふりをしたり、見ないふりをしたりしてくことでもあると、大人の奈都美を見て思うのだった。それは決して悪いことではないとも思うのだ。