なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

池井戸潤 シャイロックの子供たち 文藝春秋

シャイロックの子供たち

シャイロックの子供たち

続けて同じ著者の作品を読むと、ストーリーがごっちゃになるー。これは連作短編集。シャイロックシェイクスピアの「ヴェニスの商人」に出てくる強欲な金貸しの名前だ。舞台は住宅地の近くにある銀行の支店。支店長、副支店長、業務課、融資課それぞれの思惑が描かれている。
中には後味の悪い結末が待っている短編もあったけれど、私は利用者として一番身近に接する業務課の一般職の女性について出てくる短編のいくつかが印象に残った。業務課って簡単に説明すると、銀行の窓口係とその後ろに座って検印する人たちで構成されている(間違っていたらすいません)。目に見える数字(売上)はあげられないけど、業務量が半端じゃなさそうって部署のイメージです。時間外に事務処理を営業から強引に頼まれて、きっぱり断ろうとする姿勢に応援したくなる。全員がそうだと言わないけど、営業職の中には事務職を軽んじる人も多い。会社を支えている自負もあるからだろうけど。自分の今までの仕事を思い返して、いたく同情した。そういうときに、きっぱり断ってくる上司がいるとどんだけ仕事がしやすいことか。あと現金不足が起きたときの事後処理とか、業種が違ってもあまり変わらないのね。そういった現場で働いている人の姿が描かれていて、著者はそういったことをきちんと見ていた人なんだなぁ。
ま、「バブルシリーズ」とか「仇敵」ほどではないけれど、事件そのものはやはり人間の強欲も絡むので後味が悪い。人間はどこで道を間違えるかわからない怖さが残った。