なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

朱川湊人 わくらば日記 角川書店

わくらば日記

わくらば日記

あー、戻ってきたよ。朱川さん。病弱できれいなお姉さん鈴音(りんね)と元気な妹わっこちゃんという組合せと、昭和30年代の時代設定が、また郷愁をそそられる感じだよなぁ(って、私はそのころ、影も形もないのですが)。お姉さんは人や物を通して、その時々の状況を見ることができる不思議な能力を持っているのだけれど、事件に遭遇するごとにその力を発揮する。って展開の短編連作集。
事件は解決すれば、全て終わりのわけではなく、そこに事件に関わった人たちの事情を知ることに重点を置いているんだけど、こんなにストレートに他者の体験を受け止めていたら、そりゃお姉さんは長生きできないよって思うのだ。でも、高度成長時代の光と影や、戦争の傷跡とかが丁寧に描かれているのが良いかも。全てが過去の出来事として、わっこちゃんから語られているので、ますます郷愁をそそられる。
お姉さんの名前は何か深い意味があるのかしら?これは、続編が出そうな気がある。
著者が書きたいテーマを登場人物に言わせてしまうのが、ちょっと引っかかった。そこまで言わなくても、十分に伝わるのになぁー。余りにもストレートに言わせるものだから、道徳の教科書チックなのが残念かも。