なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

原一男、疾走プロダクション ドキュメント ゆきゆきて、神軍 

著者:原一男、疾走プロダクション 
出版社:社会思想社 現代教養文庫
発売日:1994/09/30
メディア:文庫本

先日観た映画制作のドキュメンタリ。映画を製作にするに当たっては、最初に事件真相究明ありきだと思っていたのに、映画を作ろう、で何を撮ろう?とりあえず、これにしとこっか?みたいなノリなのには驚かされた。やっぱり、奥崎謙三って自分第一主義なんだわって思った。カメラが回っているのを意識しての「演技」するあざとさも描かれているし、最初から最後まで振り回されているスタッフの様子に仕事とはいえ同情する。お互い利用するつもりで利用されている感じか。彼の言動にうんざりというか辟易しているスタッフの心中も映画を通して透けて見えたので、納得できる。結局、彼にとって、一連の言動は自己表現の手段なのかもしれない。独房の中で何十年も暖めていたわけだし、もうこれしかないって妄執に取りつかれたのかも。刑罰の手段ももうちょっと考えないといけないかも。

フィルムが現地で没収されて観ることができないニューギニアのロケ編が日本での活動以上に激しくて、あんぐりさせられる。そして、戦地だと思って赴いた土地が全然違うところだったっていう情けない顛末。何と言うか、彼らしいというべきなのか。でも、フィルムを返還してもらおうと奔走してしているスタッフの苦労も無駄にした、奥崎の激しい抗議活動に言及している下りは悔しさが滲み出ている。読み終えて、あの映画は色んな人の葛藤が滲み出ていた作品だと改めて思った。

それにしても、彼を全肯定できる奥様の存在は奥崎よりも最強です。