なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

ディア・ドクター

2008年 日本 時間:127分 配給:エンジンフィルム/アスミック・エース
監督:西川美和 出演:笑福亭鶴瓶/瑛太/余貴美子/井川遥/松重豊/岩松了 他

シネ・リーブル神戸にて

ディア・ドクター×西川美和

ディア・ドクター×西川美和

きのうの神さま

きのうの神さま

ディア・ドクター オリジナル・サウンドトラック

ディア・ドクター オリジナル・サウンドトラック

鶴瓶がニセ医者を演じると聞いたときに、丸っきり善人の役だったら嫌だなぁと思ったけど、そんな心配は無用だった。
映画の中では、何故鶴瓶演じる伊野がニセ医者になったのかは明らかにされてない。ぼんやりとした彼の経歴から察することはできるけれど。そんな彼の心の中の暗い部分と弱い部分が見え隠れして、たまらない気持ちにさせられた。

彼は今まで幸運なことに人の死に立ち会ったことはなかったらしく、長年床についている老人や肺気胸を起こしている患者を見て、うろたえるところで看護師が彼を疑い始めるけれど、彼の嘘に乗っかってやる。彼は評判が高くなればなるほど、追い詰められていく様子がたまらない。この状況で、胃の調子が悪いという患者に出会い、彼女が彼に願ったことは彼女の娘に対して嘘を突き通すこと。今まで嘘で塗り固めたことの上に、さらに他人の嘘まで背負うことになる。それは逃げたくもなるよなぁと思うよね。彼は人の死に対しては、かなり感情を揺さぶられるし、それは医師を職業とするにはかなりの弱点になるんではないかと思う一方で、その弱さというか優しさが彼がこの村に留まらせた理由のひとつでもあるような気がする。

この作品に出てくる人たちは、皆そんな矛盾した思いを抱えながら生きている。彼がしたことは確かに罪に問われるだろうけど、彼だけの罪なのかと思う。とはいえ、最後の最後で、にやりとさせられる。伊野の強かさにやられたと思う。それでいいじゃないかと思った。

高橋昌也が瀕死の老人の役で出てきてびっくりですよ。しゃれにならないってばw。そこでお嫁さんがエプロンをぎゅっとつかむアップとそれを見た後、伊野が臨終を告げて、老人を抱きしめてしまう場面を見て、この監督はやっぱ凄いわと思った。お嫁さんの苦労が一瞬でわかってしまったもの。「ゆれる」で洗濯モノを畳む香川照之の靴下のアップでも参ったなぁと思った時と同じぐらい、鳥肌が立ったよ。