なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

ヤコブへの手紙

2009年 フィンランド 時間:75分 配給:アルシネテラン
監督:クラウス・ハロ 出演:カーリナ・ハザード/ヘイッキ・ノウシアイネン/ユッカ・ケイノネン

シネ・リーブル神戸にて

勝手に心温まるお話だと思って観たら、後半滂沱の涙を流しながら観てしまう羽目に。もう、今のうちに今年のベスト1に決定したい。真摯なるもの、善意なるものを目の当たりにすると、人間って懺悔の思いが込み上げてしまうものなのかもしれない、少なくとも私はそんな思いで観た。

登場人物もシンプルに3人。牧師と恩赦を受けた元終身刑囚レイラと郵便配達人。最後まで郵便配達人の言動が不可思議なまま終わってしまうのが意味深。聖書に彼みたいな存在が出てくるのかしら。

老牧師は子供の時から盲目らしく、それでも聖書をすべて暗記して、聖書の言葉を人々に伝えるのが職務だと思っている。彼宛に届く手紙にも、祈りを込めて言葉を探し出す。そんな彼の生活は清貧そのもの。つつましい生活ぶりにこれこそが信仰というものなのかと思う。彼は彼に手紙を送っている人たちのために、彼を必要としてくれる人のために文字通り全てをささげているのだろう。それがある日を境にぷつりと手紙が途絶える。それからは、彼は萎れきってしまい、ただの弱り果てた老人になってしまう。レイラの言動にとどめをさされたかと思ったら、それでもレイラに優しい言葉をかける。私はここでレイラが改心して、牧師に親身になって手助けをするのかと思っていたのに、そんなに甘っちょろい話ではなかった。

終盤で、レイラが何の罪で罰せられて、牧師はどうして彼女を受け入れたのか、祈り続けたことが明かされるのだが、そこで彼らの立場が対等になったというか、救い救われるという関係じゃなくて、お互いが必要としている関係になる場面にとても心を打たれた。そのあと、牧師がレイラにかける言葉は、友人としての言葉だと思う。

少し謎を残したまま終わってしまうのだが、人それぞれの善意があるだろうし、善意を表す行動も人それぞれ違うこともあるのでは、と思った。赦しが最大のテーマなのかも。レイラの無骨な表情とぶっきらぼうな声がたまらない。