なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

姫野カオルコ 違うもん 文春文庫

(単行本「特急こだま東海道線を走る」を改題)



大人になって、ある時ふっと子供の頃のことを思い出す。自分はあの時どうしてあんな言動をしたんだろうと思い返してみる。それは、決して楽しい思い出でもなくて、ずっと心の奥底に溜まっていた澱のようなものだ。澱だから、ある時ふっと浮かび上がるのだ。子供だから、子供なりに「大人の事情」を察知して、無邪気なフリをしてみる。或いは、何も考えつかずに取り乱してしまう。大人は「変な子ねぇ」と訝る。言いたいことは山ほどあるのに、上手く説明できない。「ちがうもん」としか言えなかった頃のことを思い返す。

それは大したことでなければ笑い話になるけれど、逆にどうして思い出してしまったのだろうと思うこともある。そういうざらざらした子供時代のイヤな部分に心当たりのある人はきっと多いはず。