なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

ジュンパ・ラヒリ 見知らぬ場所 新潮社クレストブックス

見知らぬ場所 (新潮クレスト・ブックス)

見知らぬ場所 (新潮クレスト・ブックス)

ジュンパ・ラヒリは、期待を裏切らない作家の一人だと断言してもいいんじゃないか。ここのところ、立て続けに読める機会があったのだが、著作はこれで3作目。寡作の人なのね。
第一部
見知らぬ場所
地獄/天国
今夜の泊まり
よいところだけ
関係ないこと
第二部 ヘーマとカウシク
一生に一度
年の暮れ
陸地へ

第一部は短編集。第二部は連作短編集。
短編集はどれも在米ベンガル人の家庭ではあるけれど、殊更ベンガル人であることを強調するほどの設定は少なかった。ただ、家族の奈から自立していく子供たちや兄弟のこと、学生時代に知り合った少なからず行為を抱いた人との再会に生ずる微妙な精神的な距離感というか、埋めようもないギャップを描くのが絶妙だと思う。それがたまにどきりと毒を持っているときに読み手にあるそれと共鳴して何ともいえない読後感が残る。
第二部の「へーマとカウシク」これがつかず離れずの関係だった二人がふとしたことで再会し、別離する展開が何とも切ない。ラストは何だか映画を観ているようだった。多分、インドであれば恐らく接点がなかったであろう二人の母親がアメリカで暮らしてくなかで、望郷の思いで繋がって親しくなって、別離、再会。親の経験が子供にもシンクロしていくかのように、繰り返されていくもの。そこから芽生える思いがお互いの立場で語り合っていくと、伝わらなかった思い、知らなかった事実が見え隠れしていく。一瞬、繋がったかにみえるものが、またふっと離れていく様子が静かに、でも確実に掬い取られている気がする。上手くかけないけど、ラヒリならではの物語だなぁと、堪能した。