なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

堕天使のパスポート

2002年 イギリス 配給:東芝エンタテイメント 時間:97分

監督:スティーヴン・フリアーズ 出演:オドレイ・トトゥ キウェテル・イジョフォー
公式サイト:http://datenshi/jp

シネリーブル神戸で鑑賞

イギリスも世界各国からの難民が集まっているとは知っていたけれど、そういった人達の生活を知ることはほとんどなかった。ロンドンの町は「美しい町」だけれど、不法滞在者や亡命者は余程のことがない限り、誰もが嫌がる雑役や低賃金の仕事に就かざるをえない。そして、そこから逃れるために危険を冒しても体を張ってでも大金を得ようとする。また、同じ境遇の人間がそんな裏仕事を仕掛けたりもしている。それまでしても、「美しい町」に留まりたいのだ。

トルコ難民のシェナイはホテルのメイドとして働いていたのに、移民局に目をつけられ仕事を失ってしまう。次に見つけた仕事場の縫製工場では、工場主に足元を見られてセクシャル・ハラスメントを受けている。行き場のなくなったシェナイは元の職場の上司から裏仕事を引き受けてしまう。密かにシェナイを見守ってきたナイジェリアから不法入国しているオクウェがそれを留めようとする。オクウェが知的で紳士的な言動を見せるのに、昼間はタクシー・ドライバーで夜はホテルのフロントの仕事で休みなく働いている。お互い好きなのにわかっているのに、オクウェはあくまでも理性で留めている。その理由は段々と明かされていくけれど、切ない。

同じ境遇だからこそお互いがお互いの足を引っ張り合うことがむしろ多いと思える(密告とかね)、シェナイとオクウェを助ける中国難民(病院の慰安室で働いているの?)とか売春婦がカッコ良い。この作品の登場人物は誰もきちんと描かれていて誰一人としてなおざりにされてないんだけど、特にこの2人が私は好き。

最後にオクウェが言った「これからも自分を偽って生きていくのね」言葉がとても重く印象に残った。

色んな要素が盛り込まれているのに短い時間できちっとまとまっていて、ずしっと来るこの作品、登場人物がどれもきちんと描かれていて、見ごたえのある作品。過酷な経験を経てわずかな希望の光が差し込むエンディングにやられてしまった。

ひっそりと公開されているのがとても残念。