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*【MOVIE】パラサイト 半地下の家族

2019年 韓国 132分 配給:ビターズ・エンド

監督:ポン・ジュノ 出演: チャン・ヘジン、 チョ・ヨジョン、 イ・ジョンウン、イ・ソンギュン、パク・ソダム、ソン・ガンホ、 チェ・ウシク

ポン・ジュノ監督の作品を観るのは、「母なる証明」以来だ。あの作品も、心に重たいものが残ったけど、この作品は、心を乱されるというか、混乱するというか、気持ちの整理がつかなくなる。

貧富の差が、土地の高低差で徹底的に表現されていて、透明な壁で区別されている。久しぶりにミス・ミナコ・サイトウの「アッパー・ロウワー」って言葉を思い出した。

前半までは、大概の観客が想像しうる展開であろうと思われるが、後半から「半地下」以下の世界が出てきて、怒涛の結末を迎える。予測不可能な展開に132分間があっという間だった。

 

以下、つらつら感想を。

登場人物が悪党というわけではない。それでも悲劇は起きる。なぜなら、貧富の差は解消されないから。貧しい人はどうやっても生きていくために何らかの手段を講じなければならい。それが人から非難される方法であっても。その不条理が最初から最後まで描かれているように思えた。半地下家族は、最初からこの生活だったわけでなく、起こした商売が失敗続きで今の生活に至っている。一度底辺に落ちれば、そこから這い上がるのは厳しい。金持ち一家の高台にある場所から、家族が戻る場所までの急こう配の坂がそれを物語っている。

金持ち家族は、親の代から裕福なのかと思った。家政婦が奥様は「シンプル」と評していたが、本当に単純。疑うことを知らない。IT社長の夫は人を使い慣れている。使用人の仕事を労うけれど、区別はつける。二人とも、使用人の言葉を素直に信じるのが育ちの良さなのか。なぜ、持っているスマホで検索しないのかと不思議。韓国はコネ社会というけれど、紹介者がしっかりしていれば、それで良しなのか。

情けは人の為ならずという言葉があるけれど、この作品にいたっては、言葉通りなのか。ほんのちょっとの気のゆるみや、優しさが悲劇への一歩になっているような。それぐらい、シビアにならなければ蹴落とされる世界になってきているのが怖い。それが現実だから怖い。

半地下家族の家に飾っている額の言葉が意味深。ただ、あの生活では誰だって抜け出したいに決まっている。

高低差も象徴的だったけど、「匂い」の使い方が上手い。どんなに着飾っていても、生活臭は隠せない。自分たちの生活の中で嗅ぐことのない匂いへの違和感。これは、フレグランスや柔軟剤では隠し切れない。

「計画を立てると必ず人生その通りに行かない」何度も「計画」という言葉が出てくる。結末にも出てくる。あの家族はずっとあの場所に留まり続けるのか。絶望しかない。

映画を観終わった後、改めてポスターを見るとぞっとする。

 

この映画の怖いところは、これが自分に降りかかってくる可能性がないとは言い切れない現実を描いているから。

あと、ジェシカ・ジングルが耳から離れない。ソン・ガンホが、すごくよかった。ガーデンパーティでのシーンで心の箍が外れるところ。

映画って面白いと久しぶりに思った。

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