なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

故郷(ふるさと)の香り

2003年 中国 配給:東京テアトル/ブロードメディア・スタジオ 時間:109分
監督:霍建起 出演:郭小冬/李桂/香川照之 他
原作:

白い犬とブランコ 莫言自選短編集

白い犬とブランコ 莫言自選短編集

山の郵便配達」や「ションヤンの季節」と同じように瑞々しい風景がこの作品でも観ることがdきる。張芸謀の映像も美しいけれど、北京と同じように乾燥した空気が覆っていると思えるので、対照的だと思う。

初恋はね、もーっとキラキラしてなくちゃダメですよ。井河(ジンハー)は何だか見守っているだけでいいんだ。みたいな、妙に物分かりの良い振りしているし、暖(ヌアン)は自分でもその美しさを自覚しているし、井河の気持ちをわかっているくせに、京劇役者に夢中になっている。いつでも鏡を肌身離さず持っていて、仕事中であろうが、お顔チェックしているような女の子だよ。それなのに、自分は「あなたにふさわしくない」なんてしおらしいことを言ったりするので、何だかなぁって感じ。この初恋や約束事が美しければ美しいほど、10年後の再会が辛いものになるはずなのに。この2人の半端な分別臭さが鼻についてしまった。

それに反して、唖巴(ヤーバ)は学校にも行けずに雑役ばかりしている聾唖者だけど、目はギラギラしているし、暖への気持ちを隠そうともしない。10年前も現在も変わらないのだ。日中は仕事に追われているからか、村人達に気兼ねしているのか、村唯一の娯楽であるブランコには乗らないけど、早朝やこれも数少ない娯楽だろう省都からきた劇団の芝居を観ることもなく、一人ぼっちでブランコを漕いでいる姿に胸を打たれてしまった。

そんなわけで、暖がどうして唖巴と結婚しているのか、その説明も、暖の性格から察するに、ちょっと納得いかないなぁ、なんて思ったり。井河の訪問は「焼きぼっくいに火」も同然じゃないのさと、やきもきしてしまった。都会の豊かな生活を見せつけているようで、やな感じだし。

唖巴は障害者の専門教育を受けていないはずなのに、どうして手話が理解できるのか。自分からは手話を使って、井河とコミュニケーションを取ることをしなかったのか、不思議に思った。

井河は暖の娘と交わした約束を果たすことができるだろうか。多分忘れているような気がする。

ということで、しっくりこなかったのですが、実はこの作品は原作と設定や結末をかなり変更してるそうです。そうしないと、中国当局から撮影許可が下りないということだそうです。やっぱり、社会主義が生きている国だと改めて感じます。そして、条件の中に「聾唖者の中の役は日本人に演じさせること」ということもあったそうです。それってどういうこと?と思いますが、この役はかなり美味しいので、それはそれで良かったかも。中国語は話さなくても良いし。ちらっと原作ダイジェストを読んだけど、それでこそ暖だ!と思いました。暖の強さがこの映画では行かされてなくて残念に思います。