なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

レスラー

2008年 米・仏 時間:109分 配給:日活
監督:ダーレン・アロノフスキー 出演:ミッキー・ローク/マリサ・トメイ/エバン・レイチェル・ウッド他

シネ・リーブル神戸にて 

男くさい映画だと思った。だけど、人生がそろそろ見えてきたかなぁって頃に諦めとか焦りとかを抱きだす年頃の人にはかなり痛い思いを共感できる映画だとも思う。私には、ミッキー・ローク演じるランディが心の空白を埋めるべく、今まで放りっぱなしだった娘と再会し復縁しようと画策したり、ストリッパーに交際を申し込んだりするその迷走ぶりには、男の身勝手を感じて「何やってんだ」という憤りにもにた思いとその悪あがきっぷりにわからないでもない共感とは呼べないけど理解は出来るなぁと複雑な思いを抱いた。

そんなランディが身を投じてきた世界がプロレス。日本と同じように斜陽気味ぽい業界。そこでは、ランディをリスペクトしてくれる仲間がいたり、素直に仕事ぶりをたたえられる仲間がいる。何も言わなくても分かり合える世界。そこだけはランディを称えてくれるファンがいる。光の当たる世界。そこには暗黙の了解っていうか、リングを安全に盛り上げる約束事が存在することを敢えて明かすのは、そこは虚構の世界だと強調させるためなのか。そして、かつて輝いていたはずの仲間がしょぼくれた様を目の当たりにするサイン会の会場。ファンが数えるほどしか来ていない侘しさ。

既に最盛期を過ぎて、引退を考えていたにも関わらず、突如復帰する理由は観客側には充分解るのに、あえてランディに言わせるなんて。そして、そんなランディ役をミッキー・ロークが演じることで、リアリティが増して、途中からはドキュメンタリを観ているような錯覚に陥りそうになった。ミッキー・ローク、よく戻って来られたねぇ(涙)。しばらく見ないうちに、容貌が変わっていたのには大変驚いたけれども、ランディになるための永い役作り期間の熟成期がそうさせたのかもしれないね。色男ぶりで名を馳せていた頃を知っている世代には、感慨深いことだ。