なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

松井今朝子 吉原手引草 幻冬舎

吉原手引草

吉原手引草

とても面白く読めました。
吉原の花魁葛城について、ある人物が吉原の関係者に話を訊く設定で話が進められていく構成。そこで、どうやら葛城が何かを仕出かして、吉原を出て行ったらしいことがわかっていくことが明らかになっていくのと同時進行で吉原とはどういう所なのかも解る仕組みになっていて、吉原初心者(っても変な話だけど)にも大変親切な作りになっていて、興味深く話しに引き込まれていく仕掛けにはまった。例えば「遣手婆」とか「ざます」とか吉原発祥の言葉なのねーって感心しつつも、関係者の口から語られる葛城の人間像がプロ意識も高くて、人間味溢れる面も伺えて、そして表立っては口に出せないが、誰もが手を差し伸べたくなる魅力あふれる人間が何をしたのか気にならないわけがない。

様々な人の欲と思いで溢れている吉原で、自分を見失わず、花魁としての高い職業意識を持って、初志貫徹を通した女道には誰もが天晴れと思うに違いない。ホント誰もが惚れ惚れするし、騙されても本望って思わせるってプロ中のプロだわ。私は白い一本道から始まった初の思いを考えると、何ともその強さにすら泣けてくる。