なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

雫井脩介 「火の粉」

火の粉 (幻冬舎文庫)

火の粉 (幻冬舎文庫)

ミステリと言うよりホラーの感覚で一気読み。
特に目新しいテーマでも設定でもないのだけど、人物描写が秀逸かなぁと。元裁判官は外面はいいけれど、家庭のことには無関心で姑の介護に心身ともに疲労困憊に達している妻を見て見ぬふりだし、本人はそれに罪悪感なんてこれっぽちも感じてない。司法浪人生の息子はプライドだけ高いけど、能天気。お嫁さんは頼りになるけど、小さい子に手がかかる。一見何の問題のなさそうな家庭のほんの少しの歪みを見つけて、するりと入り込む元被疑者の武内の抜け目なさに引き付けられてしまった。

元裁判官の梶間だからこそ最後でババンと鮮やかに裁いてほしかったけれど、火の粉を追い払うのに精一杯だったということか。人間、風上と風下では考えも変わるということかなぁ。

この武内だけど、20年ぐらい前の「ロス疑惑」のアノ人を髣髴とさせる。アノ人も「信じてください」って言っていたっけ。人を裁くのか、人が犯したことを裁くのかって難しいなぁ。裁判員が実施され、選ばれ、こんな事件に出くわしたらどうするよ、って考えると恐い。やっぱり、プロに任せるのが一番じゃないのーって思うもの。

さて、ドラマ・映画化決定だそうだが、武内はー、小日向文世がいいなぁ。中村梅雀でもいいけどー。裁判官は、渡哲也ですか?誰だろうねー。馬鹿息子は八嶋智人にやってもらいたいっす。