なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

荻原浩 噂 新潮文庫

噂 (新潮文庫)

噂 (新潮文庫)

荻原浩に書けないジャンルなんてあるのか?

コンプリートしたいと思って、選んでみた初期の2作だけど、全然テイストが違うよ。

「なかよし小鳩組」は、弱小暴力団のCIに関わるこれまた弱小広告代理店の話でありつつ、家族小説でもあり、スポーツ小説でもあるようなエンタメ本。酒とタバコ三昧の広告代理店勤務の杉山の再生もかなりドラマティックだ。そこまでやるのか、やれるのかって感じで奮闘しつつも最後はってところが上手いんだよなぁ。なんと言うか余韻が残るんだよね。

「噂」の帯に書いてあることは本当(笑)口コミを利用して作為的に広めようとした噂が本当になった。そのいきさつも恐ろしいけれど、その後の顛末が怖かった。随所に出てくる香水瓶の使い方が上手いなぁーと。あとは年下の部下に仕えるベテランノンポリの組み合わせの丁々発止のやりとり。なかなか良いコンビだ。そんなほんわかした二人が解決した事件の真相とのギャップが凄いです。常に誰かの冷静な視線で語られているのが印象的。何と言うのか、善意から生じた行為が悪意を招くって結果が怖いなぁーと。それがラストの一行に集約されているような印象。