なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

父と暮らせば

2004年 日本 配給:パル企画 時間:99分
監督:黒木和雄 出演:宮沢りえ原田芳雄浅野忠信
原作:井上ひさし

父と暮せば (新潮文庫)

父と暮せば (新潮文庫)

最近、戯曲の映画化が増えているけど、やっぱ舞台と映画は別モンやし、なんか無理があるのよねぇーと思いつつ、観たわけだけど、もうのっけから圧倒され放しだった。原田芳雄宮沢りえががっぷり組んでの熱演にやられてしまった。宮沢りえ広島弁は最強にかわいいよ。広島弁をあんなにかわいく話せるなんてすごいのぅとそっちにも感動。

原爆投下から三年後、美津江は何故だか幸せになっていけないと自分を戒めてる。で、彼女を慕ってくれる男性が現れる。でも、躊躇っている。そこに幽霊になった父・武造が洗われて、娘を「恋の応援団長」とあれやこれやと励ます。竹造は幽霊なのにとてもユーモラスな語りっぷり。娘との遣り取りはとても微笑ましいけれど、そこから段々と原爆後の悲惨さが浮彫りになってくる。そして、最後に本当に躊躇っている理由を告白する。そこで、私は10年前の震災のエピソードを重ねてしまって、涙を抑えることができなかった。残された者と犠牲になった者の差なんて「運」としか言いようがないのに、残された者はどうしても自分を責めてしまう。これは原爆だとか震災だとか戦争だとかに関係なく、誰しも経験したり、いつか経験するだろう普遍的な問題と思う。それに対する父親の答に胸を打たれた。美津江はこうやって自分の思いに向き合って、整理して、やっと前に進む気持ちと持てたけれど、そこまで辿りつくまでに何年もかかった人達がすくなからずいるのかと思うと、何とも言えない気持ちにさせられる。

この元は戯曲を映画化する意味があるのだろうかと思いつつ観ていたけれど、後半でおおー、これは流石に舞台では表現できないなァと思った。あの時、まさしく私はあの瞬間に立ち会ったような気にさせられたもの。映画にしてくれて、ありがとうありましたって思ったもの。

追記:原田芳雄に惚れなおしました。

シネリーブル神戸で鑑賞