なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

読んだ

*[BOOK]高野秀行 辺境メシ 文藝春秋 

 辺境メシ ヤバそうだから食べてみた

辺境メシ。いわゆるゲテモノ食いの類かと思って読んでみれば、遥かに上回るものだった。もはや、食材なのか、それ?っていうものが出てくる。口絵にいくつか登場する料理のカラー写真が掲載されていますが、これを食べたのかってぐらい、おぞましいものばかり。さすがに、地元の人も日常的に食べているわけでもないよう。猿の脳みそも出てくるが、燻製にされた猿の顔が諦観の表情を浮かべているようにも見られて、その頭が割られて、脳みそが顔をのぞかせている。それを食べる。なんだか悪趣味なSF映画みたい(SFを観たことがないから、わからないけど)。でも、それすら食材と認識できるわけだけど、いや、食べたいとは思わない。そして、タランチュラやら芋虫とかでも、出されたら食べざるを得ない食材の限界とするならば、それを超えたものを食べているわけですよ。外観的にも倫理的にも。

想像つかない世界です。読むだけなら楽しいが、経験したくはない。これこそ、読書の楽しみといえるかもしれない。これを映像で見せられたら耐えられないかも。

 

*[BOOK]宮下洋一 安楽死を遂げるまで 小学館

安楽死を遂げるまで

 私の父は、ベーチェット病で、肺がんを患い、心臓発作を起こし、最後は腎不全で透析が必要な状態となった。心臓発作で救急車を呼んで、掛かりつけの病院に搬送を依頼したが、当日、担当医がおらず、搬送を断られ、別の病院に搬送された。父は意識不明で苦しいと感じているのかどうかすら判らなかったが、体中を管で繋がられ、いろんな計器が素人目にもわかる低い数値が示されると、もう助からないんだろうなとは判った。医師に「助からないのであれば、不要な医療はしないで、楽にしてほしい」と言ったが、医師は「助かる可能性があるのに、治療をしないわけにはいけない」「一旦、治療をしたからには止めるわけにはいかない」と言った。助かる可能性って何パーセントのことを言うのだろう。下顎呼吸も始まっていたのに。父は一週間後意識を取り戻すことなく、逝った。

私と同じように肉親を見送った経験のある人は少なからずいると思う。私は、あの時、自分が助からないのであれば、積極的な治療は望まず、苦しまずに死ねる方法があれば、選びたいと心底思った。

この本には、安楽死尊厳死)が認めれる国や地域を取り上げられている。人それぞれに結果はどうであれ、そこに至るプロセスが違えば、全てOKとならないことが難しいと感じた。当人を取り巻く環境も大いに影響することもある。これについて明解な答えを出すことは難しいと思った。

また、日本でも起こった安楽死事件のその後を取材されているが、医師と病院の関係性や、裁判での患者家族の証言等を読んでいくうちに、何で、「事件」になってしまうのか考えると、日本で尊厳死を認められるのは難しいと思った。