なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

立川談春 赤めだか 扶桑社

赤めだか

赤めだか

落語をきちんと見た(聴いた)ことがなかったのに、新春の立川談志スペシャルを見てから、こんな破天荒そうに見える人につくお弟子さんとはどんな人たちなんだろう?と思って読み始めた。あっという間にこのエッセーのような小説のようなものの語り口にひこまれた。流石だなぁ、書いても噺家さんなんだわぁ。最後のオチまで完璧だ。
談志に弟子入りしてからの修業時代からの成長物語としても読めるけれど、やはり著者にとって談志がどんな存在かについて描かれているところは熱いなぁと思った。いかに談志の落語が素晴らしいものかにほとんど費やされているような印象です。ホントに引き付けられる人には抗えない圧倒的な輝きがあるんだなぁと思う。著者が師匠に言われた言葉は乱暴な言い様ではあるけど実に的を射たもので、それだけに著者の心に残り、読み手にもそれが伝わってくる。
芸事の師弟関係は、芸の伝承が勿論前提にあるわけだけど、人間同士の濃密な繋がりも要求される。お互いが認め合っていても、師匠の下を離れなければ弟子も出てくることもあって、そのあたりは切ない。そんな出会いや別れを経験しているからこそ、また落語家として、人間としての深みというのか、情の細やかさも生まれてくるのだろう。
また、談志が師匠としての揺らぎの部分も垣間見せるところや、その思いを見事に汲んでやる弟子という構図もまた、ひとつの芸のようにも感じた。それは、談志と小さんの関係にも通じるものもあって、芸を極めていく人たちの業の深さが強く印象に残った。

落語をきちんと聴いてみようと少し思った。