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筆坂秀世 悩める日本共産党員のための人生相談 新潮社

悩める日本共産党員のための人生相談
タイトルには人生相談と銘打っているけれど、実際のところ、相談に対しての明確なアドバイスや答えがあるものは少なくて、相談内容に対してどうしてこんな問題が起きるのかという解説がなされている印象を受けた。それから、著者は日本共産党から追われた身ではあるけれど、共産党の執行部やその運営方針には不満があるけれども、共産党そのものにはかなりの愛着心を持っているように思われる。何だか現実離れしているところだけど、そろそろ現場主義というのか足元を見直す時期に来ているのに、それを意見できる人間がいないというのは、まるでブラック同族企業みたい。
蟹工船」が多くの人に読まれているからといって、それが共産党党員を増やす手立てになるのかはわからないが、この本を読む限りでは、共産党を支えている党員たちは蟹工船で働く人たちと同じように思える。いろいろ問題が山積みでそれぞれの相談内容が共産党員だけの悩みとも言えないのも興味深かった。共産党の活動に対してあれこれ素朴な疑問を抱いていたのだが、これを読むことによって解消された。それだけではなく、中の人の率直な思いを知ることができたのもよかった。人はパンのみで生きるわけではないが、主義だけでも生きていけない。その深刻さや切実さ。理想と現実のギャップ。永遠のテーマかもしれないが、今まさしくその渦中にいる人たちはそれだけでは済ますことができない。
それにしても、こうした人の悩みを真摯に受け止めてくれる人がいないってのは、組織としては問題あるよね。著者を批判するのも結構だけど、自己批判も必要だと思う。