なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

ブラックブック

2006年 オランダ・独・英・ベルギー 配給:ハピネットピクチャーズ
監督:ポール・バーホーベン 出演: カリス・ファン・ハウテン/セバスチャン・コッホ/トム・ホフマン他
三宮シネフェニックスにて鑑賞
ノベライズ:

Black Book

Black Book

これは戦争モノとして見たらいいのか、サスペンスとして見たらいいのか戸惑った。総合的にはエンタメってことでいいのかな(爆)
オランダのレジスタンス活動というのは、反ナチであって、それは決してユダヤ人擁護の立場とは別の話のようだった。どこまでも、彷徨える民族なんだなと思った。戦後の混乱期には、誰が誰を裁くのかが混迷をきたしている描写もあって、一体誰が善で、誰が悪なのかすら、判らなくなる。そういった混沌としたものを全てひっくるめてのこの作品なのかもしれない。オランダが舞台っていうのも珍しいなぁ。
それはサスペンスの要素も含んでのことだとは承知しているけれど正直、登場人物のほとんどの心理描写が希薄なので、特にエリスはただの尻軽にしか見えなくなっているのが残念。エリスにレジスタンスに身を投じる覚悟というか、決意を感じさせるほどの気迫や強さを私は感じることが出来なかった。あんなことやこんなことまでやらされて(!)体を張っての熱演はしていたんだろうけど、それは過剰な演出だったんじゃないかしらん。殺戮場面もかなりリアルというか、脳漿が飛び散るところまで再現しなくてもいいんじゃないかと思った。私はそういうリアルさはとても苦手なんだもの。
ただ、台詞に全て伏線があって、それが後から見事に生きていることに感動した。
エリスは「この苦しみは絶えることがない」と言います。エンディングはその言葉を証明する。何てことだろう。

こういう作品を観ると、人が人を裁くとか糾弾するということは、熱に浮かされてするものではないし、流れに乗っかるものでもないし、倣岸であってはいけないのに、むしろ間逆の状態でなされることに、恐怖を覚える。