なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

横山秀夫 出口のない海 講談社文庫

出口のない海 (講談社文庫)

出口のない海 (講談社文庫)

最初に人間魚雷「回天」に搭乗した学徒動員で出陣した大学生って設定から自ずと結末(大学生の最期)はわかっている。
でも、なんと言うか泣かせどころをそこだけに持っていかなかったところが、さすがストーリテラーって印象。
大学生で客観的に今の戦争がどんな状況で勝ち目があるのかどうか理解している。そんな彼らが、軍事教習で
しごかれて、精神的にも疲労が蓄積されていく中で、彼らが自分を見失わないためにずっと続けていたことの意味。
死を覚悟しながらも、夢を持っていたこと。「回天」に乗り込む動機は人それぞれ違うんだけども、そこに、人の数だけ
いろんな生き方があったことを私は知ることになる。
主人公、並木が書き残した手紙にはやはり生きることへの強い希望が綴られていて、泣けてしまう。
そして、終章で、並木が恋人に託したことが果たされたかどうかわかるのが、上手いなぁと素直に思う。