なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

母なる証明

2009年 韓国 時間:129分 配給:ビターズ・エンド
監督:ボン・ジュノ 出演:キム・ヘジャ/ウォンビン/チン・グ 他

母なる証明 (幻冬舎文庫)

母なる証明 (幻冬舎文庫)

シネ・リーブル神戸にて

ベテラン女優主演の韓国映画が日本で公開されるのって珍しいかも、ずしんと来るような映画が観たいなぁと思って選んでみた作品だけど、オープニングがやられてしまった。これは笑うべきなのかしら?と思ったけれど、無表情の母親の表情が少し崩れたときに、とんでもない結末が待ってる予感がした。それはその通りだったが、こちらの思惑を思い切り外されたものだった。

母親と、少しおつむが弱そうな息子トジュンの2人の生活。どう見ても貧しい生活の日々の中で、息子が殺人事件の容疑者として拘束され、母親が息子の無実を信じて奔走する。というのが、大まかなストーリー。母親が息子の無実を信じて奔走する。それは犯罪と言ってもおかしくない行動であったり、借金を重ねて弁護士を依頼したりとの東奔西走ぶり。その中で、殺人事件の真相が薄皮を剥がすように明らかになってくる。そこで取る母親の行動が衝撃的だった。息子を思う無償の愛というよりも、盲目的な溺愛といったほうが相応しいかも。ただ、共感できなくても理解はできる。でも、ここまで息子を真綿のようにくるむのに理由があったわけで。一連の行為は息子に対する永遠の贖罪なのかなぁとも思う。

ただ、この二人は社会的に底辺にいる階層だと思うのだが、彼らに巻き込まれた、犠牲になる人たちも社会的弱者の立場の人たちであるのが、とても居心地の悪い思いにさせる。そういえば、巻き込まれた人たちには守ってくれるべき存在がいない。それから、トジュンの友達(って言い方は不適切だとは思うんだが)は自分の手を汚さずに易々とトジュンの母親から大金を巻き上げる小悪党ぶりにも。

キム・ヘジャの存在感に圧倒されて、ウォンビンがこの作品を復帰作に選んだのは失敗じゃないの?と思ったが、最後の最後に見せる表情であぁ、ルックスだけの人じゃないんだ(失礼)って再認識させられた。あの表情の意味を考えると恐ろしくなる。母親が鍼を打つ心情もわかるというもの。もしかしたら、そうやって息子との日々を送ってきたのかなぁと考えると、切なくなるなぁ。

私も不条理なことを味わったときには、あのダンスを踊ろうかなぁ。