なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

梨木香歩 沼地のある森を抜けて 新潮社

沼地のある森を抜けて

沼地のある森を抜けて

あらー、かもしているよ(笑)これは、今までの作品と趣が異なっていた。「ぬか床」が出てくるのは知っていたけど、それで何世代も渡って培ってきたものに対する愛着みたいなものを読ませてくれるのだろうと思っていたが、軽く覆されて、細胞レベルから私たちが想像し得ないぐらいの時間を越えて延々と続けていた営みまで広がり、着地点は実にシンプルなことだった。ここまで、発想を広げられることに感動した。置いていかれそうになるので、必死で走り抜いたというのが率直な読後感。本筋で語られるのと同時進行でのファンタジックな増殖の話が上手く絡んでいけば、もっと壮大な世界を味わえたかも?着いていくのが必死だったのに、そんなことも感じる。この人の描く人との繋がりが好きなのだが、今回はそっちが手薄だったのがちょっと寂しい。
もしかしたら、作品性が変わっていく時期に入ったのかなぁ。作者の主張が前面に押し出されているのも、その表れなのかな。
できれば、風野さんを主人公にしての物語を読んでみたい。この人の考えはとても新鮮だったので。