なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

リリー・フランキー 東京タワー 扶桑社

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

東京タワー ~オカンとボクと、時々、オトン~

タイトルの付けかたが毎度のことながら絶妙だわ。リリーが考えているのか、編集者が考えているのかわからないけれど。

ここまでストレートに家族の事を書くとは思わなかった。でも、柳美里の「命」の解説にもおかんのことが書かれてあって、それもやっぱり静かな調子で書いてあって、いつものリリーじゃないと思いつつも印象に残っていた。

この家族はついたり離れたりしているけど、何だか根っこは繋がっているような気がする。根っこを繋げていたのはおかんだ。おかんの愛かもしれない。この3人はお互いをそれなりに色んな形で思いやっているのだけど、それが微妙なズレ加減で、そこが悲しくもあり、いとおしくもある。でも、最後の最後でおかんの手紙、おとんの手紙で、やっぱり親には到底叶わない思いの深さや、自分にとっては親ではあるけど、2人はやっぱり男と女なんだなぁーっていう当たり前のことを思いしらされたり。

高校や大学で好き放題やって、ぐだぐだの生活をしていても、許してくれた大きな存在がいなくなるこの絶望感や孤独感ときたら!私の両親は健在であるけれども、親しい人をなくしたときの気持ちとこの感情の吐露に同調してしまった。そして、母親がいなくなるときなど考えたくもないし、考えられない。

ま、著者の名前が名前だけに読む層は限られるのではないかと思われるが(笑)、誰が読んでもどこかで共感する部分があるんじゃないかと思う。