なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

読んだ

*【BOOK】藤田瞳子 星落ちて、なお 文藝春秋

 

【第165回直木賞受賞作】星落ちて、なお (文春e-book)

河鍋暁斎の娘とよ(暁翠)が主人公に据えることが、まず凄いよね。暁斎だったら、破天荒ないかにも芸術家的な生き方を書くことができるのに。偉大な父親とは言え、日本画のトレンドが変わってきているなかで、評価が下がる。古い絵と言われながらも、描き続ける兄の苦悩や葛藤。芸術家とはいえ、生活もある。売れる絵を描く同門の人たち。絵を描きたいと思いながらも、大作に挑む時間を作ることもできずにいる暁斎。そして、官女を取り巻く人たちの生き方。家の伝統を絶やさずに続けていくことの困難さ。逃げ出したくなる凄まじさだ。彼女の生き方に改めて暁斎の存在の大きさを実感。

関東大震災の描写も興味深かった。明治、大正は価値観ががらりと変わった時代で、絵の世界だけでなく、諸般において取り残されたり、波に乗っかってみたりということがあったのだなぁと思われた。

*【BOOK】津村記久子 つまらない住宅地のすべての家 双葉社

つまらない住宅地のすべての家

これをもし映像化するなら、木皿泉に脚本を書いてもらいたい。

逃亡犯が自分たちの住んでいるエリアに来るかも!ただ、凶悪犯ではなく、長年に渡って1千万円を横領して服役中だった女性。ありふれた住宅地に住む家の、それぞれの背景や悩みが、逃亡犯が逃げ出した理由やなぜ、向かっている先がここなのか、読み進むうちに浮かび上がってくる。そして、本人たちも気づかないような、ささやかな繋がりが何かを呼び起こしたり、食い止めたりする。それをフラットに描けてしまうのが、この人の上手さなんだと思う。