なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

孔雀 我が家の風景

2005年 中国 時間:142分 配給:キネティック/アルゴピクチャーズ
監督:クー・チャンウェイ 出演:チャン・チンチュー/ファン・リー/ルゥ・ユウライほか

KAVCにて鑑賞

最近、尺の長い映画が多くて、どうにかならないのかと思う。私自身の集中力の問題だと思うが、90分から100分がベストだ。
なのに、142分ってどういうことよ?でも、パラシュートを自転車にくくりつけて走る女の子の予告編が印象に残って、観に行ってきた。

文化大革命がようやく終わった70年代後半の地方都市に暮らすある家族の風景を淡々と映していくのだけど、3人の兄弟のそれぞれの歩み方がオムニバスのように展開していく。
長女ウェイホンは、自分の居場所がここではないと思っていて、外へ出ることを夢想している女の子。パラシュート部隊の男性に一目ぼれして、部隊に志願する。(パラシュート部隊って何のために存在するのだろう?女性隊員も多かったけれど)あえなく、願いは叶わず、それならばと、パラシュートを作って、街中を自転車で走りぬける。これが私の観た予告編の場面なのだが、とても開放的な良い笑顔なんだ。でも、それをとがめた母親が追いかけて彼女を引き摺り下ろす。彼女の夢が一気に現実に引き戻される瞬間がとても惨めな終わり方で残酷な終わり方。それ以降、ウェイホンが素敵な笑顔を見せることがなくなる。

兄弟の話は次々に展開していき、お互いの視点で見た兄弟もまた違った印象に映り、それが幾重にも重なり、最後には1つの家族の全体像が浮かんでくる。どの兄弟のストーリーに共通するのは、母の強さと父の存在感の希薄さかなぁ。ほんとに母の思いって強いよ、子供にはなかなか伝わらなかったけど。何度も繰り返される、テラス(渡り廊下かな?)の食事の光景。あれが、みんなの幸せの原風景なんだろうな。当時はいつもの変わらない毎日の繰り返しに過ぎなかったけど、なかなかままならない現在の生活から振り返ってみれば、何と穏やかな暮らしがそこにあったのか。


最後に動物園で孔雀が羽根を広げるのを待ちきれずに通り過ぎる3兄弟の家族。誰もいなくなったところで、静かに孔雀が羽根を広げる。これは、そんな家族の象徴的なシーンなのかもと思った。

家族の生活は華やぎはないんだけど、映像はなんとも美しいんだよなぁ。