なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

ケイト・アトキンソン 博物館の裏庭で 新潮社

博物館の裏庭で (新潮クレスト・ブックス)

博物館の裏庭で (新潮クレスト・ブックス)

とてもてこずった。途中で読むことを放棄しようかと思った。最後まで読めてよかった。
多分、最後まで読まないとこの小説の面白さってわからないかも。
やっぱり、イギリス人って意地悪いw。

この作品の語り手はルビー、でも胎児以前の段階から語り手ってどういうこと?
そんなルビーの語りはとても辛らつ。先祖に対しても手厳しいこと。
でも、4世代の女性の生き方は狭い選択肢の中から選ばざるをえない中で選ぼうとしても、戦争や不況という時代の流れにのまれてしまって否応なくたどり着いてしまった道であることが読むことが辛くなる理由のひとつかも。語り手が容赦ないし。
それでも、この庶民の中の庶民でもある人たちも、家族を失う悲しみ(その理由も様々なんだけど)も込みで、連綿と家族をつなげていく姿は生きることは苦しいことばかりなのかと思う反面、生命力も感じる。
最後の最後で、ようやくルビー世代で散らばった血族が繋がりつつあるところで、この一族の歴史の穏やかな時代の訪れを感じた。

この小説が独特なのは、章の中で出てきた物事について、補足が入っていること。章の中では重要な存在ではないものが、補足では、生き生きとそのことにまつわる一族の出来事を見てきたことを語りだす。これが下手したら章よりボリュームがある。これも読みにくいことの1つでもあるんだけど。読み進むにつれて、それが前後の章での出来事にうまく繋がったり、腑に落ちたりする。最後まで読むと、この一族の歴史に深みが増すって按配になっているのかなぁ。そこいらへんが、この小説が高く評価された理由なのかもしれない。
読み手の技量を試されているような小説かな。あんまり良い読者じゃなくてごめんなさいって気分だわーorz