なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

奥田英朗 サウス・バウンド 角川書店

サウス・バウンド

サウス・バウンド

久々に爽快感を味わえたなぁー!そして、痛快ですよ!
アナーキスト上原一郎を父親に持つ小学生上原二郎の視点で描かれているのだけど、人物描写が秀逸、出てくる人達がみんな活きているのですよ。父親は議論大好き野郎なだけかと思っていたら、意外な展開を見せる。一匹狼になった理由も豪気だ。ただただ、頭でっかちの正義を振りかざしているわけではないのね。そんな父親の姿を二郎も二郎なりに理解していくところがいいな。ただ、二郎は二郎の世界というか付き合いもあって、そこに踏み込んでこられると困ってしまうところも可愛いなぁと思ってしまうのです。小学生の人間関係も何だかとてもリアルではないかしら。彼らなりの友情の育て方とか別れ方とかちょっとじんと来てしまったよー。子供から大人の世界と事情にちょっと踏み込んでいく辺りがよいのかも。
一郎は他人の目からすると困った人であるけれど、その言動は信条に基づくものでありブレがない。そういうことは、結構エネルギーと勇気が必要だと思う。だからこそ、家族や応援する人達が自然と集まってくるんじゃないかなぁと思う。ラストに、一郎が二郎に言うセリフがそれを物語っている。そして、一郎以上にお母さんがアナーキストかもしれん。だてに「ジャンヌダルク」と呼ばれていたわけじゃないね。男前です。この2人がいて、この家族が成り立っているんだろうな。
あと、学生運動事情がよくわかって勉強になったです(笑)