なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

三木卓 裸足と貝殻 集英社文庫

裸足と貝殻 (集英社文庫)

裸足と貝殻 (集英社文庫)

満州から引き揚げてきて、静岡で少年時代を過ごした著者の自伝的小説。
当時の中学生から見た、時代の移り変わりや事件の感想を興味深く読んだ。兄の影響で、社会運動も興味を抱いたり、知的好奇心が旺盛だし、思考力というのが高いのに驚かされる。同級生同士で作文の交換をするなんて、自分たちの中学・高校時代には考えもつかなかったことだ。教師もとりあえず臨時の仕事として就いていた人も多かったせいだろうけど、なんというか学問の素養が格別高くて、それを子供にも話したいぐらいに飢えていたんだと思うと改めて戦中に抑圧されていたもの、犠牲にしなければならなかったものが多かったんだなぁと思われる。
初恋や母親の中にみる女の部分とか、思春期らしい戸惑いとか率直な文章で描かれていて、そういうえば、男女共学になったのは戦後になってからなんだわーと、そのくすぐったさが何とも微笑ましく。続編は興味を持ち始めた社会運動もからめての展開らしいので、読んでみたい。


柴笛と地図

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