なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

梨木香歩 村田エフェンディ滞土録

[BOOK] 梨木香歩 村田エフェンディ滞土録

村田エフェンディ滞土録

村田エフェンディ滞土録

1899年に土耳古(トルコ)に留学した村田の回顧録
この年代はあちこちできな臭い動きが始まってくるだろうと、私達はわかった上で読んでいるわけだ。回顧録は実に淡々とトルコ、イスタンブールの日々が綴られていく。実は、その後この生活がどんなにかけがえのない、何物にも替え難い日々になるのかと思っただけで切なくなってくる。

ギリシャやトルコ、ドイツ、イギリスと国と文化が違っていても、「共感はしないが、理解する」ことを弁えている下宿仲間や主人や召使たち。200年以上も前にこんな風に相互理解ができる人達の中で過ごした生活を実に羨ましく思える。そこから、段々とトルコでの政治活動に巻き込まれそうになったりして、否応なく、歴史の歯車に組み込まれていく様が何とも言えない気持ちにさせられる。

トルコにいた鸚鵡がはるばる海を越えて村田の元へ届けられる下りには、じんとさせられる。