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どうってことない日々のあれこれ

 森達也 「ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー」

ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー

ベトナムから来たもう一人のラストエンペラー

1900年代のベトナム王朝の直系であるクォン・デの生涯を追ったノンフィクション。タイトルは本当は正しくないけれど、こういうタイトルは取っ掛かりが良いというか目に止まりやすいってことなんだろう。

日本にアジア各地から留学生が夢を持って訪れていた時代があったということにまず驚かされる。そして、外国から侵略を受け続けられている歴史を持つベトナムで起こっていた独立運動。その指導者に影響を受けて、日本に密入国してきたクォン・デ。色んな読み方が出来るフィクションだと思う。
クォン・デの生き方。勇んで密入国したのは良いけれど、そこから先の展望をまるで考えてないように見受けられる。所詮は王族なのかなぁとも思う。独立運動がうまく進まないならば、日本でもいくらでも勉強する機会はあったのだし、実際周囲がお膳立てしてくれているのに、彼は放棄してしまう。彼の甘さがとても歯がゆく、不憫にも思える。

彼に対する日本の扱いは当時日本が他のアジアの国々をどう捉えていたのかもわかる一例にもなる。無自覚でここまで進んできた日本の在り方は未だに変っていない。それがとても恐ろしく感じられる。