なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

紅夢

1991年 中国・香港 配給:東宝東和 時間:125分

監督:張藝謀 出演:鞏俐,何賽飛 他

原作:蘚童 妻妾成詳

中国版大奥みたいな感じかなぁ。19歳でお金持ちの第四夫人として嫁いだ娘を鞏俐が演じてます。お金持ちの家に嫁いだときは、まだ学生っぽく初々しさが漂っているのに、段々女性達の権力闘争に巻き込まれていくうちにエゴむきだしになっていくのがたまらない。正夫人は後継者を生んでいるし別格としても、第2夫人から第4夫人との確執というか寵愛争いはなかなか見ごたえあります。主人が訪れるときは紅い提灯に火が一斉に灯されて壮観。帰るときはこれまた一斉に消灯。中国の伝統的な建物(四合院造りなんだろうか)の閉鎖的な造りとあいまって、家法に則ってのこの決まりは否応なく女性たちが主人の愛を受けようと仕掛けるようにしてんじゃないのか、と思わせる。狭い世界の中で生きていかなければならない時代を上手く表現されているように思います。つか、実際にこんな感じだったんでしょうか。

第4夫人の小間使いは密かに主人と逢っているので、実は自分も妻として召抱えられるのじゃないのかと夢見ている。彼女の部屋には夫人にしか認められていない紅い提灯が灯されている。それも破れたのを修復して貼っているのだ。なんだか、たまらない気持ちがする。だってさ、愛人だよー?それでも、その地位を得られるとある程度の生活は保証されるわけだよ。外には貧しい生活が待っているから。

第4夫人はこのあと思いも寄らない行動に出る。精神の破綻はもしかしたらここから始まっていたのかもしれない。彼女は自分が不幸であるだけじゃなく、第3夫人や小間使いの少女まで巻き込んでしまうのだ。不幸スパイラルですよ。映像が綺麗なぶんだけ、悲劇が引き立つのだ。

この作品に彼女達の命運を握っているはずの主人はほとんど出てこない。出てきても、ちらっと顔が出るか出ない程度の扱い。それでも権力者なんだ。彼にとっては、彼女は珍しいオモチャみたいなもの。だから京劇役者や学生あがりを夫人に娶ったってのもあるかもしれない。それにしても、第2夫人はこの戦いにとりあえず勝っている。この狡猾さには寒気がするけれども、これが彼女の生きる術だと思うと、哀しすぎる。