なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

 鷺沢萠 ウェルカム・ホーム! 新潮社

ウェルカム・ホーム! ISBN:4103780053

2つの家族の「ウェルカム・ホーム!」収録。

渡辺毅のウェルカム・ホーム!」は妻に先立たれた父子英弘と憲浩とシェフだったのにシュフしている毅の3人家族。この設定を読んだ時点で、何、これゲイカップルの話なのって勘違いしちゃったよ。って読者が思うだろうってことは、既に計算済みなわけなんだけど、毅が育てたことは自他ともに認める子の憲弘が書いた作文を偶然読んだことで、毅はこの3人の関係のありように考えてしまうって展開。

世間から見たら「フツー」じゃないよなぁと毅が思い悩んでいるけど、英弘の一言で目から鱗になっちゃうところが素敵だー。みんながそういうふうに考えられたら良いのになぁー。最後の憲浩の作文が上手く締めている。憲浩クンはいたって自分が「フツー」だと思っているけど、その柔軟な思考と順応性は「フツー」じゃないって思うぞ。

「児島律子のウェルカム・ホーム!」は女性視点だとかなりリアル。証券会社に勤めている律子がバブル期に周囲の浮かれっぷりに唖然としながらも、実生活では全然ダメダメっつーか冷静な判断力が発揮できてないのも、ちょっとわかるなぁと共感できる(のも、どうかとは思うけれど)。再婚相手の子供の「聖奈」とのつながりは、いささか強引な気がする。

血の繋がらない人同士が共同生活する設定は吉田修一の「パレード」があるけれど、これよりももっと密接に繋がった関係を著者は切実に欲しかったのかたのかも。「児島律子〜」の聖奈の結婚相手の拓人は沖縄出身の大家族でしかも同居って設定だし、と思うのは考えすぎかなぁ?