なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

 菊豆(チュイトウ) 1990年 中国・日本 配給:大映 101分

監督:張芸謀・楊鳳良 出演:鞏俐 李保田 他

原作: 劉恒 訳/市川宏「菊豆」徳間文庫(品切なので店頭購入は無理ぽい)
I

昨日見た「キープ・クール」と違って静かな作品。静かと言っても全然穏やかではない。この作品に出てくる人達は心の中は負の感情で煮えたぎらせているけれど。
1930年代、菊豆はお金で買われて染物商の元へ嫁ぐ。妻とは言っても、実際は奴隷のようにこき使われるし、夜は夜で子供ができないことを責め立てられて、痣や傷が絶えることがない。でも、菊豆は染物商の甥、天青が密かに覗き穴を作っているのを知って、傷だらけの半身を見せたりして、結構強かなんである。やがて、2人が結ばれて、染物商が半身不随になってからが、反撃が始まるのかと思いきや、不幸の歯車がさらに回り出すしていくのだ。
菊豆の女ゆえの立場の弱さも辛いけど、天青の不甲斐なさとか虐げられ続けた者の卑屈さもこの時代の中ではどうしようもないことなのか。この時代は家のメンツも重んじられていたのね。命名式の場面は興味深い。

彼らの子供天白が彼らに懐かず、染物商に「お父さん」と呼んだり、彼が染料田?に落とされて溺れるところで初めて声を立てて笑うところなんて、彼の心に最初から影が見えて、見ていてきつかった。彼らの悲劇と裏腹に映像が余りに美しすぎて、余計残酷さが増す感じ。