なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

エリザベス・テイラー エンジェル 白水社

エンジェル

エンジェル

これは、べらぼうに面白かった。映画はいささかの憐憫の情を感じ取れるんだが、原作は最初から最後までエンジェルを辛らつに論っているのがたまらんかったです。
彼女の書く小説は、今で言うハーレクインみたいな感じかな、あとケータイ小説みたいな。いわゆる読書家や知識人が読めば、鼻で笑ってしまうような感じかなぁ。何年かに一度はこういうスター作家が出てくるなぁ。時代が求めるものと合致しているものを書いているとか何とかで。そうやって嘲笑の対象になりつつも、何故だか目が離せない。

エンジェルが貧乏から成功するために結婚という手段ではなく、作家で成功することを夢見ていること。彼女は痛切に自分を認められたいと妄想込みで願っているのが印象的。あの当時の女性としては、珍しいタイプかも。いわゆる悪目立ちする存在なのかもしれない。成功と同時に彼女は自分の人生を飾り立てていこうとする。それが彼女の現実だと思い込んでいくというか、これこそが「本当の私」だと信じていく様が皮肉てんこもりで描かれていて、そこまで書かんでもと思うんだが、枚挙にいとまがないエピソードを次々と欲してしまう私。それって、トリックスターと呼ばれた人たちの典型的パターンだよなぁ。私はそういう人たちが見守るのが大好きなんだもの。虜になってしまうわ。凄い運命的な出会いですw。

虚飾の人生で自分を飾り立てていたエリザベスが、母親の死後に改めて自分の生家を眺めて、愕然とするのが印象的だった。お金に明かした暮らしに最後まで馴染めなかった母親が衰弱しきってから、戻りたかった場所が自分が全てを取り仕切っていた小商売を営む家だった。それを解せなかったエリザベスが足元が崩れてしまいそうな感覚に囚われるのが印象的だった。
だからと言って、彼女が虚飾の人生を捨てることなく、最後まで自分を奮い立たせて、手入れの行き届かなくなった家の中で悪態をつきながらも生きていく様は、滑稽でもあるけれど、痛烈な孤独感も同時に感じさせられる。そうやって、もがきながらも生きていくのは幸せだったのかもと思う。自分の意思で決めた道を進んだのだから。