なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

大統領の理髪師

2004年 韓国 配給:アルバトロス・フィルム 時間:116分
監督:イム・チャンサン 出演:ソン・ガンホ/ムン・ソリ/リュ・スンス 他

大統領官邸がある町に住む理髪師ハンモは、本当に「善良な市民」。町内会長が支持するから、自分も支持するし、不正選挙にも手を貸してしまう。そんな彼がひょんなことから、大統領お抱えの理髪師に選ばれる。その選ばれるにも密かに試されていたり、官邸内の散髪風景からも、その頃の韓国の政治がどれほどのものであったかと想像できる。コミカルな描写なんだけど、そこから透けて見えるモノに恐ろしくなってしまう。全編通して直接的に政治を説明したりしないけど、それだからこそ見え隠れしている政府の圧政というか暴政ぶりが際立ってくる。

ハンモは失礼のないように、大統領やその関係者に頭を下げっぱなし。その姿を見ているのに、息子はとっても素直で良い子なんだよー。お父さんがバカにされたら、食ってかかるし、それは近所の練炭屋や大統領の息子だって同じ。それなのに、お父さんが頭を下げている。すごく理不尽な光景なのに、「お父さん、ごめんなさい。お父さんがボクの為に蹴られたんだから、お父さんはボクを蹴ってもいいよー」って言うだもの。ま、お母さんは本音で生きていて、お父さんにズケズケモノを言ってるからバランスが良いのかも。そんなお父さんのせいで、息子はえらい目に逢ってしまうんだけど、やっぱりお父さんは息子の為にあちこち治療に東奔西走。そして、やっと辿りついた名医(仙人?)に言われた言葉が最後に効いてくるのだ。この決着に私はカナリ感動してしまった。

全編通して直接的に政治を説明したりしないけど、それだからこそ見え隠れしている政府の圧政というか暴政ぶりが際立ってくる。それでいて、観た後は爽やかなというかちょびっと痛快な気分になれて、今までに観た韓国映画の中では一番良かったかもー!

理髪店に勤めている男性はアメリカにとても憧れていて、ベトナム戦争に派兵されて以後の人の変わりようが出てくるのだけど、ほんの少しの場面だったのに、私には強く印象に残った。あの頃の韓国は国内だけでなく、外国でも血を流していたんだなぁ。そこで体験したことを想像すると、とても遣り切れない感じがする。でも、この10年間があってこその現在の韓国の強さもあるのだなぁとも思える。