なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

変身

2002年 ロシア 配給:パンドラ 時間:90分
監督:ワレーリイ・ミローノフ 出演:エヴゲーニイ・ニイミローノフ他
原作:フランツ・カフカ
変身 (新潮文庫)

最大の関心事といったら、虫になったザムザをどう表現するのかに尽きると思う。舞台版の「変身」もあるし、監督、脚本、役者とも舞台出身だし、舞台ではよくある演出だったけど、映画としてこんな演出を観るのはなかなか新鮮。違和感のある人もいたかもしれないけど、下手なCGを使うよりは賢明かも。

美しい映像で繰り広げられるは得体の知れない不安に襲われそうな奇妙な夢の数々。そして、虫になったザムザを取り巻くグレーゴル一家。あーもう、まんま小説の世界だよなぁと「虫」になったザムザを観た瞬間に虜になってしまった。一家の大黒柱で自慢の息子であり兄であったザムザなのに、虫になってからはホントに虫けら扱い。外見はともかく本質は変わっていないのに、何て仕打ち。それでも、ザムザは妹が部屋に入ってくると、姿を見せないようにひっそりとベッドの下に潜り込むのだ。その不条理さに同情するけれど、でも虫だしなぁーと思ってみたり。

でも、現代社会に置き換えてみれば、ザムザの存在はいわゆる「透明な存在」になるのかも。一緒にいても、その存在を「なかったこと」「ないこと」にされている人達は少なからずいる。だとしたら、カフカ預言者になるのだろうか。と、柄にもなくちょっと難しいことを考えさせられる作品だった。

ザムザを演じるニイミローノフの眼がカフカの眼と似ているので、そこらへんもカフカの世界にどっぷりはまる要因になっているのかも。凄い役者さんだ。