なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

空気人形

2009年 日本 時間:126分 配給:アスミックエース
監督:是枝裕和 出演:ペ・ドゥナ/ARATA/板尾創路 他

原作:

ゴーダ哲学堂 (竹書房文庫 GY 8)

ゴーダ哲学堂 (竹書房文庫 GY 8)

シネ・リーブル神戸にて

観終わった後に、オスカー・ワイルドの「幸福な王子」を思い出した。全く趣の違うストーリーだが。打ち捨てられた空気人形を見たときに、彼女が人間に与えたもの以上のものを、彼女は人間から与えられたのか。空気すら抜けてしまったので、もうその心を読むことはできない。
「空気人形」がラブドールだったなんて知らなくてびっくりw。気持ちを持ってしまった人形を演じるペ・ドゥナの美しい裸体もどことなく作り物めいた無機質な美しさでたどたどしい日本語も含めて、人形の化身みたいだった。ここらへんの作り物の世界の中にやたらリアリティのある設定を持たせるのが、是枝監督の特質なのかなぁと思う。ラブドールを愛するファミレス店員とか閑古鳥の鳴いているレンタルビデオ屋の店長とか、壮絶な事件を記録して自分のことのように語る老女とか。パンチラ萌えとか色々。

人形が心を持つという設定を見ていて、言葉を持つということと心を持つということはどちらが先に覚えることなんだろう。彼女が一方的に受身のままでいるのは、そういう生活を送ってきたからなのだろうか。彼女は実に健気でいじらしいんだけど、何と言うか男性にとっては余りにも都合の良い設定に性格づけられているように感じて、少しもやっとした気持ちになった。私は特にフェミニズムに対して特に深く考えることのない人間なんだが。

多分、高橋昌也演じる老人が彼女に聞かせる吉野弘の「生命は」という詩がメインテーマだと思われるんだが、それがあまり生きていないように思う。ただひたすら、孤独な人たちの一方的な外との繋がりを見せられるばかりで、やるせない気持ちでいっぱいになった。最後に人形が見た夢は「マッチ売りの少女」のラストみたいだった。彼女は、誰かの風になったのか。どうなんだろう。

彼女が自分の体から、ARATA演じるレンタルビデオ屋のバイト君の空気をそっと吸う場面がたまらくかわいかった。