なんてつメモ

どうってことない日々のあれこれ

エンジェル

2007年 ベルギー・英・仏 時間:119分 配給:ショウゲート
監督:フランソワ・オゾン 出演:ロモーラ・ガライ/シャーロット・ランプリング
原作:エリザベス・テイラー

エンジェル

エンジェル

エンジェル (ランダムハウス講談社文庫)

エンジェル (ランダムハウス講談社文庫)

シネカノン神戸にて

タイトルがヒロインの名前です。妄想癖が強く、そして功名心も強い女の子。母1人が食料品店を切り盛りしているお家の子。でも、本当は貴族の生まれなの。と、思い込もうとしている日々。妄想を小説という創作にぶつけて、それで有名になってやると野心満々。そんなに上手く行くわけないよという周囲や観客の予想と裏腹に、世間の注目を浴びて、文学賞まで受ける盛り上がりっぷり。ま、そんなに上手く行くわけないよと当初の予想は外れるわけがなく、その落ちぶりったら!って感じです。
が、この監督さんは、とても人が悪いと思った。前半のエンジェルの順風満帆の時期は、鼻っ柱だけは強くても、知性や教養のかけらを微塵も感じさせない言動ぶりをせせら笑うかのようにあげつらってみせるのに、見る見るうちに打ちひしがれていく後半の彼女には、憐憫の視線を隠さないのだ。意地悪いよねぇー。後半に彼女に襲い掛かる悲劇の連続は、自業自得としか言いようがないんだが、それすらも得意の妄想で消し去ろうとする。しかし、彼女自身の物語では1人の妄想で済むのだけど、相手の気持ちを誰一人鑑みようとしないので、妄想の世界が破綻する。最後に、彼女の夫の不倫相手に対峙するのだけど、そこで彼女の鏡の中の世界は粉々に砕け落ちる。あれが、彼女が現実を知る唯一で最大の瞬間かも。しかも、その女性の名前がアンジェリカなんだよね。
でも、最後まで観ると、それすらもエンジェルが描いた妄想の物語なのかとすら思えてくる。エンジェルの本当の人生と彼女が描きたかった人生は、一体どちらなんだろうか。

原作は50年以上前の作品ですが、充分現代にも通じるものがある。でも、情報伝達速度の速い現代では、エンジェルの作り上げた妄想世界はすぐに破綻するかも。それが、なかなか綻びなかった時代を生きた彼女は、幸福だったのか、どうか。

全て紛い物チックな質感で統一された映像がこの物語を引き立てているなぁ。私的には後半の不幸のてんこ盛りはもっと激しくして欲しかったなぁーと思った。それじゃ大映モードか。シャーロット・ランプリングがキーパーソンになるのかなぁと思っていたら、あまり出番が少なくてがっかりしつつも、最後に放つ台詞が効いてました。