行ってきた
*【TRAVEL】イタコ口寄せ体験ツアー
9月の初めにクラブツーリズム主催の「イタコの口寄せ体験ツアー」なるものに参加した。母が一回イタコに会いたいと言い出したのがきっかけである。私は、特に会いたい人もいないし、会って聞きたいこともないので、母の付き添いである。
そもそも、あの世が存在しているなら、成仏しているなら、現世から呼び出しを掛けるなんて、何事?って心配させてしまうじゃないか。心配させてまで、呼び出す必要がある人が思い浮かばないのである。これは幸せなことじゃない?わからんけど。
1日目、青森空港から宿泊先へ直行。着いたホテルは、売店は夕方からしか空いていないし、喫茶室も(コロナ対策なのか)休業中。近くにコンビニもないし、温泉に入るしかないのである。青森は寂しいところだ。母は、イタコに聞きたいことを考えているので、部屋にこもっていて、私は早速温泉につかった。露天風呂も貸し切り状態である。部屋に戻って、ぼんやり過ごす。
ホテルの小宴会場で、一組ずつイタコさんと対面するわけである。夕方から一人30分でイタコさんは5時間ほど口寄せをすることになる。ツアーの添乗員の方が部屋の前で案内していた。これ、結構大変だね。私の母は、17時からだったはずが、添乗員の方が「もう既に時間オーバーしていて…」との言葉通り、結局それから30分経って、部屋に入った。
イタコさんは、何か神がかっているとか、エキセントリックな感じもなく、とてもニュートラルな印象。淡々と会いたい人の関係や、亡くなった日や亡くなった原因を聞いてくる。この時点で、母は人生相談をするように、聞きたいことを話している。これは、どんな言葉を掛けてほしいか、イタコじゃなくても判るんじゃないのか、と思う。一通り話が終わると、お経のような、呪文のような、不思議な節回しで口寄せが始まるが、下りてくるのもすごくあっさりしている。呪文の続きみたいな感じなので、気が付けば下りていたというような印象。あれは、訛りのせいなのかしら。
基本言われることは、決まっているみたい。こんなところまで会いに来てくれてありがとう。その気持ちがうれしい。遠くで見守っているよ。みたいな感じ。死ぬときは、辛くて痛くて苦しくて悔しかったけど、みんなに会えて楽しくやっている。別れを言うことができなかったことが心残りだった。みたいなことを訥々話す。で、合間に「何か聞きたいことある?」と問うてくる。
母は、この時点で涙を流している。何が琴線に触れたのか、私にはわからない。最後の最後に「あいつも馬鹿なことをしたなぁと、考えが浅いなぁと思うけれど、遠くに見ているよ」で終わった。
母は、イタコさんに「ここまで来た甲斐がありました」とお礼を述べた。予定通り30分で終了した。
イタコの口寄せは、亡くなった人に会いたいという強い気持ちがある人じゃないと、行くべきではないと思った。母の内容も、結構重い話だったけど、それを亡くなった人に言うてどうなるのか?とも言いたくなる内容だった。イタコさんは、結構重たい話も聞かされるんだろう。
イタコさんは普段は、自宅で営業しているそう。ホームページに案内がありました。ちなみに、占いサイトもある。何というか、もっと閉じた感じというか、隠されているイメージでいたけれど、ビジネスだもんねぇ。なので、興味のある方は八戸に行ったほうが、観光もできるのでお勧めします(笑)
翌日、バスで3時間揺られて、恐山へ。もっとおどろおどろしいイメージだったけれど、晴天のせいか、硫黄のにおいが漂っている立派なお寺としか言いようがない。境内の中に、温泉小屋があったりするのが、街中のお寺にはない感じ。硫黄が噴き出ているので、草木も生えない、と聞いていたけれど、あちらこちらに生えている。何というのか、水木しげるの世界観を想像していたのに、肩透かし感が否めない。でも、ツアーの途中で立ち寄ったお寺の人のお話では、昔から恐山に行った人が大げさな話をしてきたから、恐ろしいイメージがついたのではないか、とのことだった。案外そんなものかもしれない。ただ、テレビは2年で壊れるらしい(笑)。
ただ、亡くなった人に着せる洋服を(住所・名前まできちんと書いてあった!)お堂に納めているのとか、手ぬぐいや草鞋を木の枝に結わえてある風景を見ると、その思いを感じて、なんだか観光気分できたことに後ろめたさを感じるのだった。人の思いが強く残っている場所って、やっぱり重い。しかも、恐山は本当にみちのく感がすごいので、遠路はるばる、その思いを持って、この場所に来るしかないって気持ちが土地に残るのだろうか。
お寺の案内をしてくれたお坊さんがめっちゃ関西弁だったのが、なんか興ざめでした(笑)乗り突っ込みするなよ、恐山で、みたいな。訥々した語り口を期待したのに。
そして、私の青森県の旅は4度目だ。特に思い入れがあるわけでもないのに、なんか呼ばれているのだろうか。知らんけど。
そして、このツアーに参加している方々も、イタコを通して、亡くなった人に会いに来ていることを考えると、みんな誰にも言わない思いを抱えて生きているということを、改めて感じたのだった。
最後に8月には、こんな本を読みました。そして、もうすぐ9月が終わる…
*【BOOK】信友直子 ぼけますから、よろしくお願いします 新潮社
信友さんのお父さんの気概に敬服する。
*【BOOK】宇佐見りん くるまの娘 河出書房新社」