読んだ
以前、読んだ竹宮惠子の「少年の名はジルベール」の感想はこちら。
読んだ後、かなり重い気持ちになった。部外者であれ、重い気持ちにさせられるので、当事者は、もっと説明のつかない複雑な感情を抱いたはずだと察せられる。だって、50年近く前の出来事を詳細に書かれているのだ、昨日のことのように。そして、永久凍土としたいって。この思いは消化しきれないから、封印するってことですよ。時間が忘れさせてくれるってことじゃない。それぐらいの出来事だったことが、全ページにわたって、伝わってくる。すごい負のオーラ。結局のところ、「人間は難しい」としか言いようがない。誰が善で誰かが悪ってことでもない。言葉も当人から発した言葉が回りまわって、他人から伝わってきた言葉が全然違う意味合いになって届いたりすることも、よくあること。ただ、二人が少女漫画家として影響力のある立場だからこそ、周囲の思惑も重なったりして、ここまでこじれたような気がする。
その出来事が、「少年の名はジルベール」と「一度だけの大泉の話」とでは、描かれ方が違うのだ。どちらが真実なのか、わからない。わからないけれども、お互いに眼の不調に悩まされたり、スランプに陥ったりするわけだ。
告白本の返答を告白本で行う。ここまでしないといけなかったのか、とさえ思う。かえって、傷ついたりはなさらないのか。本当に人の気持ちはわかりません。人間て、本当に難しい、この言葉に尽きるのではないか。
とはいえ、47年組って(この単語も否定されていますが)すごいなぁ。山岸涼子もデビューしていたのね。私は子供時代にあまり漫画を読んでいなかったのだけど、名前は知っている方々ばかりだ。ちなみに萩尾望都さんの作品は「半神」と「百億の昼と千億の夜」しか読んでいない。「半神」は、中島らもがエッセイで激賞していたので、読んだのだけど、ちょっと衝撃的だったことを覚えている。
この大泉の話、ドラマ化されたら見たかったなぁ。
*【BOOK】深緑野分 カミサマはそういない 集英社
短編集だけど、ほぼバッドエンド。SFぽい要素もあり、バラエティ豊か。でも、バッドエンド。ただ、最後の「新しい音楽、海賊ラジオ」は、再生の希望があるように感じた。新作が待ち遠しい。